「第1回ヨコハマやさいレシピコンテスト」で優秀賞に輝いた「大根と鶏肉の豆乳酒粕煮」。その考案者である管理栄養士の川尻千里さんにお話を伺うため、勤務先である横浜いずみ台病院を訪ねました。
ー第1回のコンテストに応募された経緯をお教えください。
私が幼いころ、母は仕事で忙しくしていて、代わりに祖母がよくお料理をつくってくれました。コンテストに応募しようとなって、寒い季節に祖母がつくってくれた粕汁の思い出が蘇ったんです。祖母の粕汁は隠し味に味噌を使っていましたが、記憶を頼りに試作してみると、やや味が物足りなかったんです。そこで、豆乳とショウガも加えました。
私は以前から当院の院外広報誌でレシピを連載していて(下段参照)、お料理の写真も自分で撮影しています。この「大根と鶏肉の豆乳酒粕煮」も自分で撮って応募しました。ただ、他の応募作を見てみると、どのレシピもよく考えられているし、とにかく写真がキレイなものばかりだったんです。何か賞をいただくなんて、とても無理だなと思いました。それだけに優秀賞の知らせを受けたときは望外の喜びでした。
受賞後、患者様や職員の方に「大根と鶏肉の豆乳酒粕煮」を召し上がっていただく機会がありました。ありがたいことにとても好評で、「自分でもつくりたい」とおっしゃる方にはレシピをコピーしてお配りしました。
ー第2回のコンテストのテーマがお弁当です。管理栄養士のお立場で、お弁当づくりにおけるアドバイスなどはありますか。
川尻 千里 よくいわれることですが、炭水化物の主食が3、タンパク質の主菜が1、ビタミンやミネラルの副菜が2の割合でお弁当箱に詰めると、栄養面でのバランスが良くなります。お野菜が不足しがちな方も多いですが、プチトマトやゆでたブロッコリーを入れると、栄養面も彩りも良くなると思います。
それと、食中毒対策として、お野菜の水気をきちんと切り、熱いおかずは冷ましてからふたをするように心掛けてください。
ー特に毎日お弁当をつくるとなると、大変なことも多いと思いますが…。
今は冷凍食品の種類が増えていますが、できればひと手間加える工夫をしてほしいなと思います。例えば、冷凍食品の唐揚げに季節のお野菜を加えて甘酢で和え、酢豚風にする。そうすると栄養のバランスも良くなるし、彩りもキレイになります。
先日、孫の運動会があって娘がつくったお弁当を目にしたのですが、お野菜を刻んで卵焼きに入れるなどの工夫をしていて、わが子ながら感心しました。毎日のこととなると大変ですが、毎日食べさせるものだからこそ、ちょっとした手間を惜しまないでほしいなと思います。
ーひと手間を惜しまないことと、意識的にお野菜を加えることが大切なんですね。
同じように、ショウガに含まれるショウガオールには血行を促進して体を温めてくれる作用がありますし、新陳代謝や発汗作用を高める働きがあります。寒い季節に長ネギや玉ネギ、ショウガをいただくことは風邪予防や免疫の面でとても大きな意味があるんです。
こういった話をすると、難しく考えてしまう人もいるかもしれません。でも、例えば直売所に足を運べば季節のお野菜が並んでいますよね。私も仕事帰りに当院の近くの直売所に立ち寄って、いずみ野産のお野菜をよく買い求めています。
旬のお野菜はそれだけでも十分においしいですが、「今しか食べられない貴重なものだな」と思うとより一層おいしく感じられます。しかも、その時季に必要な栄養も得られるわけですから、こんなにありがたいことはないですよね。毎日お料理やお弁当をつくるのは大変ですが、忙しいときこそお野菜に目を向けていただきたいですね。